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歯ブラシだけじゃ60%。スウェーデン式の衝撃 ― 眞田先生とめぐる「補助用具の底力」〜フロスと歯間ブラシで見える世界〜


歯ブラシで落ちるのは“60%”ってホント!?

M子
今回のテーマは、補助用具なのよね。一般的に知られているのは「歯間ブラシ」「デンタルフロス」などだけど、正直「そこまでする必要あるの?」と思うところもあるわけよ。歯ブラシだけで十分じゃないの?
眞田先生
『海外の歯ブラシ、なんであんなにデカいの!?』の回でもお話ししましたけど、磨けているのはホントに歯の表面。普通の歯ブラシで60%、残り40%は歯と歯の間とか、歯と歯茎の境目とか。そういった細かいところは、どうしても限界があるので、そこを歯間ブラシとかとかで賄って。それでもMAX85%とかくらい。
M子
ちょっと待って、MAX85%?
眞田先生
90%いったらすごいって感じなんですけど。
M子
90%いったらすごいって、それ磨き方が上手いってこと?
眞田先生
上手。ほんとに丁寧に、しっかりやられてると90%くらい。大体の人はそこまではいけないです。フロスで全部磨くこともできるんですけど、全部磨いたら1時間近くは絶対かかる。ほんと疲れちゃう。
M子
1時間って、それはもう修行よね。
眞田先生
そうです。その残り40%にアクセスするために、フロスや歯間ブラシが必要なんですよ。


フロスと歯間ブラシ、どっちが先?

M子
使う順番としては、フロスと歯間ブラシで、どっちが先になるわけ?
眞田先生
フロスと歯間ブラシは目的が一緒なので、どっちか選択していただければいいです。
M子
へー。両方やらなくていいの?
眞田先生
どっちも歯と歯の間のところにアプローチするんですけど、歯間ブラシはどちらかというと、歯の隙間が空いてるところ。フロスは、前歯とか歯が重なってて、どうしても歯間ブラシ入らない部分に。実はフロスは、歯茎の中、いわゆる歯周ポケットの内部まで、糸って入ることができるんです。
M子
えっ!?中に?痛くないの?
眞田先生
歯間ブラシだと、まっすぐなので、ちょっと限界があるんです。歯茎の下の方を掃除するとき、歯間ブラシは前後の動きだけなので、溝の中までは汚れを落とすことが難しいんです。
M子
なるほどね。
眞田先生
糸だと中まで入れることができます。でもフロスは、一見、使い方が難しい。歯間ブラシの方がイメージしやすいから、使う人も多いんでしょうね。私はフロスの方が歯にくっついた汚れの除去率が高いと感じています。
M子
なるほど〜……あの細い糸、意外と“奥の掃除機”なのね。


スウェーデン式、リスク部位から攻める

眞田先生
フロス、歯ブラシとどっちが先か?というご質問ですが、昔は「磨いた後に仕上げでフロス」って教えられてました。
M子
はい。あたしもそう思ってたわよ。
眞田先生
でも今は、「最初にやる」のが主流です。
M子
最初!?なんでよ?
眞田先生
後に回すと、面倒になってサボる人が多いんですよ(笑)
M子
あ……私だわそれ。「もういいか……」って、つい歯ブラシで終わらせちゃう。
眞田先生
なので、「最初にリスク部位(歯間)をやっておく」ことで、本当に必要なところのケアを確実に済ませるんです。これはスウェーデンとか、北欧は、先にリスク部位からやりましょう、っていうことで。
M子
へえー。攻めの姿勢ね。
眞田先生
最後に、通常通り磨く方が、歯垢の除去率が、とても良いっていうことがわかったんですね。
M子
順番が違うだけで変わるのね。スウェーデン人、賢いわね。
眞田先生
いわゆる「スウェーデン式オーラルケア」です。


性格で変わる、歯磨きの順番

眞田先生
でも、それが絶対正解という訳ではなく、人によって順番を変えます。本当にその人の生活環境や性格など、そういったところも踏まえて、歯ブラシの順番や使うものの順番を組み立てて考えます。
M子
ちなみに歯間ブラシを先に使った方がいい人、フロスを先に使った方がいい人って、どういう人なの?
眞田先生
本当にもう、面倒くさがりな人とか。
M子
ああ。あたしだわ(笑)
眞田先生
汚れがついてる場所も関係してきてて、歯と歯の間に残りやすい人もいれば、表面に残りやすい人もいる。それは、歯の形態によってなんですけど。
M子
歯の形!?そんなに違うの?
眞田先生
人によって丸い歯、角張った歯、細い歯、四角い歯など様々です。汚れが溜まりやすい形ってあるんですよ。
M子
歯にも個性があるのね。
眞田先生
その歯の形、形状にもよるので、結構、角張ってる人っていうのは、ほんと、汚れが残りやすいので。
M子
じゃあそれは、歯医者さん・ドクターの仕事というよりは、歯科衛生士さんの仕事なの?
眞田先生
はい、多分。予防の歯科衛生士の仕事だと思いたいです。
M子
思いたい(笑)。先生、控えめね。
眞田先生
そうですね。こういうグッズを使う方法は、歯科衛生士の仕事が多いので。授業でも「歯ブラシ構造」「磨き方12種類」「補助用具の選び方・使い方」まで、細かく指導しています。
M子
なるほどね。もうそれは授業として、歯間ブラシ・フロスの使い方、みたいなものをやるってことよね。


補助用具たちは「人」である

眞田先生
補助用具っていうことで、歯間ブラシ、フロス、タフトブラシ、舌ブラシとか。これもホントに一部なので、もっといろんな形があります。スポンジブラシとか。
M子
スポンジブラシ?なにそれ。
眞田先生
はい、これはもう介護の現場とかね。ちょっと、手が不自由な方とかね、そういった方とかに。
M子
え、磨くの、それで?
眞田先生
これは汚れを、かき出す感じです。食物残渣とかを、こう、かき出す感じです。
M子
なるほど、奥に詰まっちゃったりとか、残っちゃったりとかね。
眞田先生
はい。あと、ベロの上とか。これが補助用具と呼ばれる人たちです。
M子
はい、人ですね(笑)。それぞれ個性があって役割があるのね。
眞田先生
はい。それぞれひとつずつ、形とか材質とか。別にそこまでやらなくていいんですけど、私は好きなので(笑)
M子
そうよね。先生の愛を感じるわ。
眞田先生
学生にも「卒業してから多分、何かの役に立つと思うよ」っていうことで。
M子
絶対役に立つわよね。要は、教育で決められた部分以外の部分よね。その熱意、素敵よ。ありがとう、先生。